ふるさと加東の歴史再発見

少し気をつけて周囲を見回してみると、身近なところにふるさとの歴史を伝えるものがある。

父の創作ブックから⑥-昭和初期の無産青年の叫び

今日も「父の創作ブック」から詩を紹介します。19歳の市場に住み込みで働いていた貧しい青年だった父は、文学を通して無産階級の叫びを表現しようとしていました。昭和初期の生活や街のようすも伝わってきます。



陽の照らぬ
長屋の路地で
臭い塵箱から紙屑を
撰つてゐる色黒の女は
車力にボロを積んで
歩いて行く男に
”よけいに集つたかいー”
と ドンゴロス袋を肩にして、言ふと、
”今日はないよ。”
女は返事はなかつた。
蠅の飛び立つ塵箱の
紙くづを眺めながら
だまつてゐた。
××階級の人は、二人が
夫婦である事を
知らなかつた。
一九二八・五・三一

長屋の細道で
塵箱をあさる屑やの老人と
ドンゴロス袋を肩にした
紙屑買の女とは
白い眼と、赤い眼を
向け合つた。
晝の太陽が笑つてゐた。