今日も引き続き父の創作ブックから作品を紹介します。無産階級、プロレタリア文学を志して市場の2階に住み込んで創作に打ち込んだ青年。時代は昭和3年。
十九の春で
將來社會主義者を
夢見てゐる男が
三〇錢飛ばしてキネマの
ラブシーンを見て
”おらあーにもあんなに
旨くラブが進まないものかなあ”
とチラツク寫眞を身乍ら
叫んでゐた。
一九二八・五・二三
太陽と長屋
三錢の風呂賃と
七錢のバット代と
コップ一杯二錢の酒とで
日給は終はつてゐた。
太陽が輝いて
バラツクの長屋には
辛の錢布を握つた奴
ばかりだつた。
一九二八・五・三〇