第十三課 養生
寺澤廣高は、肥前の國唐津の城主なり。常に養生を心がけ、毎日午前四時に起き出でて、二時の間、職を勤め、食事前必ず馬に乗りて、馬場を駆け廻り、食事後は、武芸を学びて、身体を健にし、用事なければ、午後六時にいねて、身体を休め、精神を養ひたり。されば平生は勿論軍に臨みても、人に後れを取らざりき。廣高常にいへるやう、「夜ふけまで、無用の事を語りあへば、徒らに精神をつからせ、明日の勤めをも妨ぐるものなり、」とて、召し使ひの人人へも、早く暇を与へ、眠りにつかしめたりとぞ。暁には、早く起きんことを要し、夜は、熟眠せんことを要す。
このように戦国時代から江戸時代を生きた武将の生活ぶり、その奥にある考え方や精神を簡潔に記述して、子供らに規則正しい生活の大切さを教えたのです。子どもは文から馬場を駆ける城主の姿などを想像しながら話を読んだのでしょう。夜更けまでスマホを手に無用の事を語りあえば云々と言い換えれば現代にも通じる教えです。