ふるさと加東の歴史再発見

少し気をつけて周囲を見回してみると、身近なところにふるさとの歴史を伝えるものがある。

東条川疏水の水路をボートで探検-小学生、親子が疏水を体験、学ぶ

 

 

 20日(日)、前日の雨は上がり、天気は回復したものの寒い風が吹き、一気に気温が下がりました。
 加東市の中央に広がる嬉野台地の東端にある安政池の畔を流れる東条川疏水の幹線水路で「水路deボート探検」のイベントが開催されました。
 このイベントは、鴨川ダムを起点とする東条川疏水について体験を通して学んでもらおうと、水路網の維持、管理を担っている兵庫県東播土地改良区を中心に県や国が協力して行っているもので、東条川疏水ネットワーク博物館の活動の一環でもあり、大阪・関西万博の兵庫県のフィールド・パビリオンにも認定されている取り組みです。
 鴨川ダムは、戦後の食糧不足を解決するため、東条川の支流である鴨川を堰き止めて建設されたもので、昭和26年に完成しました。ダム建設には土井部落の立ち退きという尊い犠牲が伴いましたが、満々と湛えられたダム湖から延びる幹線水路、水路網を通して、今の加東市、小野市、三木市の広い地域に水が送られるようになり、昔から水不足に悩んできたこの地方の水田を潤し、また、嬉野をはじめ台地の開発、水田化が進められました。
 水路は、隧道で山を抜け、水路橋やサイフォンで谷を渡り、ポンプアップされて台地に水が送られました。水は、ため池に送られ、さらに水田へと送られ、その水によって、豊かな実りが実現しました。
 しかし、ダムや水路が建設されて数十年が経過し、老朽化が大きな課題となりました。そうした中、疏水百選に東条川疏水が選定され、この疏水をしっかり維持管理し、次の時代、世代に確実に伝えていくために、疏水を地域の貴重な資源、財産として、その価値を再認識し、みんなで守っていこうという気運が高まり、兵庫県北播磨県民局が牽引役となって東条川疏水ネットワーク博物館の構想が立てられ、自治体、団体、グループ、個人などのさまざまな主体から構成された会議が立ち上がりました。鴨川ダムが完成した11月23日が「東条川疏水の日」に制定され、毎年、活動発表会が開かれています。また、国の東条川二期の工事が始まり、水路やサイフォンなどの施設の改修、補修工事が進められています。
 次の世代に伝えるためには、次代を担う子供達に疏水のことを知ってもらうことが大事だということになり、学校教育の中で「疏水学習」への取り組みが始まりました。兵庫教育大学では、カリキュラムづくりが行われ、多くの先生が授業作りに取り組んでいます。
 疏水がもたらした水の恩恵は米などの農作物の増産だけではありません。流域の地域に伝わる伝統文化への影響、維持にも大きな役割をはたしていると言えます。また、ダムや円筒分水施設、サイフォンなどの水利施設の高度な技術も使われました。そうした「疏水文化」を私たち共有の財産として大切にし、次の世代につなげていきたいとの思いが込められています。
 今年から、親子でボートに乗る取り組みが始まりました。神戸市や西宮市からの参加者もあり、広がりが見られました。スタッフの皆さんが水路脇の草を刈り、歩けるようにしてくださっていました。ふと見上げると、アケビを見つけました。何年ぶりでしょうか。なんだか嬉しくなってしまいました。